教育のプロに聞く

つまずきやすい算数の文章題......苦手にさせているのは、そばにいる大人の責任?

2012/05/13 Tag:田中博史先生 小学生算数

問題の意味を考えることが重要

 算数で計算は得意だけれど、文章題が苦手という子どもは少なくありません。しかし、文章題をできなくしてしまっているのは、そばにいる大人の責任が大きいのです。

 勉強ができなくなる子の保護者の多くは、まだ子どもが考えようとしないうちに結論を口や顔に出しています。例えば、1年生の子どもが算数の問題を読んでいて、足すか引くかわからない場合。子どもはそばにいる保護者に「これ足すの? 引くの?」と聞くでしょう。そこは保護者の方も「自分で考えてごらん。」と言いますね。ところが子どもが「じゃあ、足す。」というと、保護者が「えっ?」と顔に答えを出してしまう。1年生の学習は足すか引くかしかありませんから、保護者の顔を見れば子どもは考えなくても、答えがわかってしまうんですね(笑)。

 こんな笑い話になるような指導が家庭では連続して行われていることが多いようです。そこで私はいつも保護者に「子どもが自分で決めるまでは表情に出さずに、ただニコニコしていてください。」とお伝えしています。子どもが「足す!」と言ったら「どうしてそんな風に考えたの?」とニコニコしながらたずねる。すると、子どもはむきになって「こうなるからでしょ!」と答えてくれるはずです。このように、保護者と子どもが問題について話をする訓練をすると、文章題に必要な言語力がつきます。言葉の力や読み取る力、それを人に話す力がつくと、算数は得意になるのです。

 ところが多くの算数の学習の場合、問題の意味を考えることよりも、早く式を覚えさせて、計算が早くなることに重点が置かれています。しかし、高学年になってつまずくのは、自分で考えることをしない子どもなのです。

文章を言葉にしてイメージ化させる

 文章題が苦手な子どもほど、すぐに足すとか、引くとか式を書きたがって、文章をよく読んでいません。そこで私は、文章題を読んだら教科書を閉じて「今のお話にはだれが出てきた?」と聞いています。「だれ? 先生、名前なんて書いてあった?」と、"算数なのにこんなことを聞くの?"と、子どもはみんな驚きます。算数は数字の答えを出すだけだと思っている子どもに、問題文の場面をイメージさせるのです。場面のイメージができれば、問題を解く手がかりになるんです。特に、低学年の問題文では"足す"か"引く"しかありません。ですから、イメージ化しなくても解けた気になっているので、イメージをしない子どもが多いんですね。

 私は必ず、文章題のお話を読んだらイメージ化をさせるために、「まず絵にしてみよう。」と指導しています。計算式ばかりを考えている子は、はじめ絵は描けません。ですから「どんなお話だった? えみさんって女の子がいたよね?」と聞き、子どもが「買い物に行ったような気がする。」といえば、「買い物に行ったんだ。よく覚えてたね。」と、文章題のお話のイメージを巻き起こしてあげます。

 家庭学習でも、文章を子どもに読ませたら教科書を閉じさせて「どんなお話だったか聞かせて。」と言って、子どもにお話の内容を説明させてください。子どもは最初、問題を丸暗記して答えようとするでしょう。そうではなく「どんなお話だった? だれが出てきたの?」と、やさしく聞いてください。子どもが答えられなくても「なんで見てないの?」とすぐ怒ってはいけませんよ(笑)。

 そして、もう一度教科書を開いて読んでみる。すると今度はお話を理解しようと思うので、問題をよく読むようになります。特に文章題は声に出して読むことが大事なんです。算数の授業だと先生と一緒に問題を一度読むくらいでしょう。ですから、算数特有の文章表記になかなか慣れません。算数の文章題も国語の音読のように、何度も声に出して読んでみることをおすすめします。音読をすると、"あわせていくつでしょう""ちがいはいくつでしょう""残りはいくつでしょう"という算数の表現に慣れてくるので、文章題のひっかけや思いこみにつまずかなくなります。

筑波大学附属小学校・田中博史先生

 山口県公立小学校教諭を経て、1991年から筑波大学附属小学校教諭。全国算数授業研究会理事・日本数学教育学会出版部幹事・教科書編集委員・基幹学力研究会代表・算数ICT研究会代表。また「課外授業 ようこそ先輩」を始め、多数のNHK教育番組に出演。

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