2025年5月3日
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「インクルーシブ教育」の特徴 そのメリットや今後の課題についても解説します
多様性が重視されるようになってきた現代で、誰も置き去りにしない理念を持つ「インクルーシブ教育」が徐々に広がりを見せています。インクルーシブ教育とはどのようなものなのか、その特徴やメリット、さらに、インクルーシブ教育が抱える課題についても解説します。
すべての子どもが同じように学び合える「インクルーシブ教育」

インクルーシブ教育の概要と、取り入れられるようになってきた背景について説明します。
インクルーシブ教育とは
「インクルーシブ」には「包み込む」「包摂する」という意味があります。インクルーシブ教育とは、障がいの有無や性別・国籍・人種・宗教などの違いがあっても、誰も排除することなくすべてを包み込み、共に学び合うことをいいます。排除しないのと同時に特別扱いすることもなく、お互いの特性を認め合いながら過ごせるのがインクルーシブ教育の理想です。
インクルーシブ教育の目的
何らかのハンディがあっても、環境を整えることでその子どもの良さを引き出していくことは可能です。さまざまな背景を持つ子どもが、その子らしさを活かして生きていけるよう学んでいくのが、インクルーシブ教育の大きな目的です。
インクルーシブ教育が注目されている背景
1994年にスペインで開かれた「特別ニーズ教育世界会議」で「万人のための教育」という理念が提唱され、それをきっかけにインクルーシブ教育が注目され始めました。日本では、障がいのある子どもは特別支援教育の枠組みで学んできましたが、世界的な流れのなかで、子どもを分離し隔離しているのではないかという批判も生じるようになりました。そこで、少しずつインクルーシブ教育の考え方が取り入れられるようになってきたのです。
インクルーシブ教育のための「環境整備」や「合理的な配慮」

インクルーシブ教育の内容について、もう少し詳しく見ていきましょう。
すべての子どもが学べる環境
インクルーシブ教育では、すべての子どもが平等に学べるよう、環境を整えることが重視されます。目が見えない子どもや弱視の子どもが困らないよう点字ブロックを配置する、車椅子を使う子どものためにエレベーターを設置したりスロープを作ったりするなどの配慮を行います。
さまざまな特性に合った学習方法
読み書きが苦手という障がいを持つ子どもは、専用の機器を使うことで授業に参加することができます。また、視覚情報が多いと頭が混乱してしまう子どもは一番前の席に座るなど、特性に合った学習方法を選べるようにします。
柔軟に学習環境が選べる体制作り
学習環境が子どもに合っていない場合、転学などが柔軟にできる体制作りも必要です。本人や保護者の希望をもとに、医療関係者の意見や地域の状況などを調整しながら、総合的に学習環境を整える必要があります。
お互いの特性への理解
子ども同士が、お互いどのような特性を持っているのかを理解していることも大切です。自分と違っているから排除する、かわいそうだから特別扱いする、などのようには考えず、配慮すべきところは適切に配慮しつつ、同じ仲間として過ごしていくのが理想です。
多様性への理解が進み、コミュニケーション能力が育まれる

いろいろな子どもたちが一緒に学べるインクルーシブ教育の良さについてまとめます。
多様性が理解できるようになる
一般的に成長途中の子どもは、家庭や学校などの狭い世界のなかで暮らしています。そのため、自分の生活圏内に障がいを持つ方や異なる人種の方々がいない場合は、多様な方々と接する機会は少ないといえるでしょう。インクルーシブ教育でさまざまな背景を持つ子ども同士が一緒に過ごすことで、世の中には多様性があることを理解できるようになります。
周りに気配りができるようになる
自分とは異なる特性を持つ子どもたちと接するなかで、自然と周りに気配りができるようになるため、状況に応じてどのようなサポートをすればよいのかがわかってきます。日常的にサポートを行っていると、ごく自然と他者への思いやりが育まれていくでしょう。
コミュニケーション能力が養われる
ハンディを持っている子どもは、社会のなかでどのようにコミュニケーションをとっていけばよいのかを学ぶことができます。引け目を感じることなくサポートを求めたり、自分でやれることは精一杯頑張ったりする力が身についていくでしょう。
保護者の負担が軽減される
障がいのある子どもがいる家庭では、どうしても保護者に負担がかかりがちです。学校でサポートを受けながら自然に過ごすことができるようになると、子どもを安心して学校に送り出せるようになり、保護者の負担軽減にもつながります。
環境整備のための財源問題や人材不足などが今後の課題
さまざまなメリットのあるインクルーシブ教育ですが、課題があるのも事実です。一つ一つ見ていきましょう。
環境整備が追いつかない
学校や地域によっては、インクルーシブ教育の環境整備がうまく進まないという問題もあります。設備を整えるにはどうしても費用がかかるため、財源がないと整備をすることができません。環境整備はインクルーシブ教育の基本ともいえますが、ここでつまずいてしまう学校が多いという現実もあります。
インクルーシブ教育専門の教員がいない
インクルーシブ教育を行うには、教員に専門の知識や技術が必要です。子どもにどのような配慮が必要なのかがわかっていないと、子どもの困りごとにうまく対応することができないからです。また、クラスのなかに、特別な配慮が必要な子どもが複数いた場合、教員1人では対応できない可能性もあります。人材不足はインクルーシブ教育の大きな課題といえるでしょう。
インクルーシブ教育への理解が不足している
保護者のなかには、ハンディを持っている子どもがいることにより、我が子の授業が遅れることを心配する人がいるようです。また、教員のなかにもインクルーシブ教育を十分に理解できていない人もいるといわれています。大人も含めて全体がインクルーシブ教育を理解できていないと、うまく進めるのは難しいでしょう。
家庭、学校、地域社会が協力して課題を乗り越えることが大切
多様性を認め、お互いを思いやることのできるインクルーシブ教育の理念は素晴らしいものです。まだまだ課題はありますが、家庭や学校、地域社会の協力のもと、少しずつ広がっていくことが望まれます。
子どもの障がいや特性によっては、学習がスムーズに進みにくいこともあります。お子さまの学力に不安を感じるときは、一人一人に寄り添った指導を行う学研教室をぜひお選びください。