2023年2月5日
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「母子分離不安」大丈夫? 環境の変化にうまく対応するためにできること
保育園や幼稚園の入園を控えて「長い時間離れて大丈夫かな」と不安になったり、実際、離れるたびに子どもに泣かれてつらい思いをしたりしている方もいるかもしれません。「母子分離不安」と呼ばれる状況について、その原因と対策を考えていきましょう。
保護者と離れることに不安を感じる「母子分離不安」は、子どもによく見られる行動
「母子分離」という言葉から母親と子どもの関係と思われがちですが、母親に限らず、子どもと親密な関係にある保護者と離れるときに子どもが不安になる状況を、一般的に母子分離不安といいます。
乳児なら抱っこからベッドに寝かせたときに泣いてしまう、幼児なら保育園や幼稚園で別れるときに泣いてしまってなかなか離れられないといった状況が想像されます。大切な人と離れることで、子どもが大きな不安を感じている状況です。
ただ、不安自体は人間なら誰しも持っているもので、自分を守るためには必要な反応といえます。小さな子どもにとって、いつも自分のそばにいてくれる保護者から離れる不安は、おそらく大人が想像する以上のものなのかもしれません。
しかし、母子分離不安は多くの子どもが通る道でもあり、その行動自体は決して珍しいものではありません。
やがて、ある程度の時間がたてば、必ず保護者が迎えに来てくれることがわかるようになり、極端な不安感や恐怖感は減っていくものです。したがって、保護者の愛情が子どもに十分伝わっていれば、それほど心配することはありません。母子分離不安は一過性のものであり、成長の一つの過程と考えるとよいでしょう。
離れると泣く・後追い・人見知り……母子分離不安に見られる特徴的な行動とは
母子分離不安は、発達段階によってそれぞれ特徴的な行動が見られます。大きく分けて、3歳ごろまでの行動と3歳以降の行動についてまとめてみました。
3歳ごろまでに見られる行動
抱っこからおろすと泣いてしまう
子どもが赤ちゃんのとき、抱っこしていると落ち着いているのにおろした途端に泣き出してしまう、という経験をした方は多いのではないでしょうか。これも母子分離不安の一つです。
物理的に保護者と密着していることで、子どもは安心感を得ています。抱っこ自体が保護者と子どもとの絆になっているため、体が離れただけで不安になり泣いてしまうのです。
いつもお世話してくれる人の姿が見えなくなると泣く
少し成長してくると常に抱っこをする必要はなくなりますが、いつもお世話をしてくれる人の姿が見えなくなると心配になって泣いてしまうことがあります。
保護者の姿が見えないと、子どもはその存在自体がなくなってしまうと感じ、不安感が強くなるといわれています。
だだをこねる、後追いをする
保護者が子どもから離れようとするとだだをこねて嫌がったり、後追いをしたりするようになります。
まだまだ心の発達が未熟なため、少し離れるだけで不安を感じるのです。
3歳以降に見られる行動
いつも保護者のそばにいたがる
ずっと保護者にしがみついていたり、部屋に一人でいることができなかったりします。迷子になるのではないか、誘拐されるのではないかと心配する子もいます。
誰か一人の保護者に執着することで、他の家族を敵視するような行動をとることもあります。
一人で寝ることができない
夜寝るとき一人では不安で、必ず誰かがそばにいることを求めます。暗闇を極端に怖がるため電気を消して寝ることができないケースもあります。
また、睡眠の質にも影響し、なかなか寝つくことができない、夜中に何度も目を覚ます、怖い夢を見るなど、大人のストレス状態と同じような症状を見せることもあるでしょう。
他の人と関わることを嫌がる
保護者以外の人と関わることを避けるようになります。外に遊びに行くことを嫌がり、家で保護者と一緒に過ごすことを求めます。人見知りが強くなり、保護者を通さないと話ができないといった行動も見られます。
幼稚園や保育園でなかなか保護者から離れられない
登園時、なかなか保護者から離れられずにしがみついたり、泣いて保護者を引き留めようとしたりします。登園自体を嫌がるようになることもあります。
おなかや頭が痛いなど身体症状が出る
母子分離不安の状態が続くと、腹痛や頭痛、吐き気などの身体症状が現れることもあります。また、食欲がなくなったり、おねしょが続いたりするケースもあります。
一時的に一緒にいる時間を増やしたり段階的に離れたりする工夫を
3歳ごろまでの行動は、心身が発達していくうえでの通過儀礼と考えていいものです。多くの場合、成長するにしたがって母子分離不安の行動は少なくなっていきます。
一方、3歳以降に見られる行動は、環境の変化によるものが多いといわれています。今まで保護者とおうちで過ごすことが当たり前だった環境から、保育園や幼稚園という新しい環境に変わるのは、子どもにとって大きなストレスとなるものです。
この段階で母子分離不安の行動が見られるときは、次のようなことを試してみてはいかがでしょうか。
子どもと一緒にいる時間を増やす
おうちにいるときには、意識的に子どもと一緒にいる時間を増やすとよいでしょう。保護者から十分に愛されていることを感じられれば「そばにいなくても自分は大切にされているから大丈夫」と思えるようになり、スムーズに離れることができるはずです。
一緒に散歩をする・ひざの上に乗せて絵本を読む・一緒に料理や掃除などの家事をするのもおすすめです。
忙しい毎日の中ではじめは少し大変かもしれませんが、子どもが安心して登園できるようになるまでは、子どもを最優先にすることを意識してみてはいかがでしょうか。
離れるときには子どもが安心できるような言葉がけをする
幼稚園や保育園に入る前から、段階的に離れる練習をしておくのもよい方法です。
その場から離れるときには、離れる理由やいつごろ戻ってくるかなどを子どもに伝え、納得してもらうことが大切です。
最初は短い時間から始め、少しずつ離れる時間を延ばしていきます。戻ってきたときに「待っていてくれてありがとう」「一人で待ててえらかったね」と、感謝の言葉を伝えたりほめたりするとより効果的です。
保護者が心配し過ぎない
子どもは大人の様子にとても敏感です。保護者が「離れてしまって大丈夫だろうか」と、心配し過ぎるとその気持ちはすぐ子どもに伝わるものです。そのせいで子どもも不安になり、かえって離れられなくなることもあります。
初めてのことは心配ですが、子どもを信じて「慣れれば大丈夫」という気持ちで送り出せるとよいでしょう。
甘えてきたときは、突き放さずにたっぷり甘えさせてあげましょう
赤ちゃんのときに「抱き癖がつくからあまり抱っこしない方がよい」という話を耳にした方もいるかもしれませんが、最近は、十分に抱っこをしてあげた方が子どもの精神が安定するといわれるようになりました。
同様に、それまで一人で寝ていたのに急に一緒に寝たいと言ってきたり、抱っこをせがんできたりしたときには、できる範囲でたっぷり甘えさせてあげるとよいでしょう。子どもの成長は一進一退です。ゆっくりと成長していくのを見守る余裕が持てるとよいでしょう。
本格的に保育園や幼稚園が始まる前に、集団生活の練習の場として学研教室をぜひご活用ください。